経営者お役立情報
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《経営者お役立情報》2017年12月26日
鬼十則と京セラフィロソフィに見る成功のための普遍性
2017ユーキャン新語・流行語大賞に「インスタ映え」「忖度」が選ばれました。
企業法務を扱う弁護士の立場から2017年の言葉を選ぶとしたら、「働き方改革」「民法改正」が両横綱ではないでしょうか。
働き方改革には、プロフェッショナルの時間にとらわれない働き方、同一労働同一賃金などの要素が含まれますが、その中核を担うものは「時間外労働・長時間労働の是正」になります。
分かりやすく言いかえると、「残業代を払えばいくらでも働かせることができるというものではない」ということです。
働き方改革を加速させることになったことの一つに、電通の新入女子社員が過労自殺した事件があります。長時間労働が悲惨な事件を引き起こしたとして、当時の社長が引責辞任に、会社は刑事処罰を受けました。
この事件では、電通の4代目社長吉田秀雄の言葉で、社員手帳(Dennote)に長らく掲載されていた鬼十則が話題となりました。
内容は以下の通りです。
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。 2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。 3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。 4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。 5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。 6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。 7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。 8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。 9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。 10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。 |
中でも特に5つ目の項目の「殺されても放すな」などの表現が長時間労働を助長したなどという批判があり、電通は手帳からこの記載を削除しました。
確かに、鬼十則は一つ一つの言葉が尖っているのできつい印象を受けるかもしれません。しかし、改めて読み返してみると、そこに込められているメッセージは仕事で成功するための普遍的な価値が込められていることに気づきます。
たとえば、「生き方」「成功への情熱」「働き方」などの著書でも有名な京セラ創業者・稲盛和夫が考え、京セラの社員手帳にも記されている京セラフィロソフィ(78項目)を読むと、鬼十則ととても似通っていることに気づきます。
※カッコ内の数字は京セラフィロソフィの項目番号を表します。
仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。 →「常に創造的な仕事をする」(36) →「自らの道は自ら切りひらく」(51) 仕事とは、先手々と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。 →「自ら燃える」(25) →「能力を未来進行形でとらえる」(67) 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。 →「人間の無限の可能性を追求する」(43) →「チャレンジ精神をもつ」(44) 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。 →「高い目標を持つ」(12) →「自らを追い込む」(30) 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。 →「もうダメだというときが仕事のはじまり」(46) →「成功するまで諦めない」(54) 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。 →「渦の中心になれ」(28) →「開拓者であれ」(45) 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。 →「潜在意識にまで透徹する強い持続した願望をもつ」(42) →「見えてくるまで考え抜く」(53) 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。 →「信念を貫く」(47) →「真の勇気をもつ」(49) 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。 →「有意注意で判断力を磨く」(39) →「手の切れるような製品をつくる」(74) 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。 →「本音でぶつかれ」(32) →「小善は大悪に似たり」(61) |
売上8400億円を誇る電通の中興の祖であり広告の鬼と言われた渡邊秀雄、京セラを創業し、売上1兆4000億円の企業に育てた稲盛和夫。仕事を成功させるための王道は「正々堂々と地道な努力」ということでしょうか。
働き方改革とは、「とにかく労働時間を短くすることだ」と誤解されることがありますが、そうではありません。その本質は時間当たりの生産性(付加価値)を高めることにあります。
わが国のGDPはアメリカ、中国に次いで世界3位ですが、時間当たり労働生産性はOECD加盟35ヵ国中20位にすぎません。
いずれにせよ、仕事の量で勝負するのではなく、主体性と目的意識をもって最短で最高の成果をあげるという仕事の質を高めていくことこそが、労働人口減少の局面に入った日本が世界と戦える唯一の方向であることは間違いありません。