伸びてる会社の目標設定 5つの法則

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2017年8月7日

伸びてる会社の目標設定 5つの法則

伸びてる会社の社長には、決まってでかい目標があります。

目標とは、売り上げの額であることが多いのですが、何もそれに限りません。

「売り上げを10億円にする」「利益を3倍にする」「世界で10億人が使うサービスのプラットフォームをつくる」など、何でもいいのです。

「目標」と「夢」の違い

目標と似て非なるものに「夢」があります。もうみなさんはご存じかもしれませんが、夢にはなくて目標にあるものが2つあるのです。それは「期限」「検証の可能性」です。

「あなたの目標は何ですか」という質問に対して、伸びてる会社の社長は、「売り上げを3年で2倍にします」「今年は部署でナンバーワンの営業成績を上げます」などと答えます。一方、「世の中がビックリするような商品を開発したい」とか、「同業者からもうらやまれるような会社にしたい」と答える会社は、残念ながらあまり伸びていません。

前者の答えには、「3年以内」「今年いっぱい」といった明確な期限がありますが、後者の答えにはそれがありません。いずれこうなりたいという「いずれ」はいつになっても(ほぼ)訪れないので、期限がないものを目標とは呼べません。


また、前者の答えは、その目標が達成されたかどうかを簡単に検証することができますが、後者の答えは「世の中をビックリさせたかどうか」「同業者からうらやまれたかどうか」を検証する判定基準が不明確であるため、結局達成されたかどうかが分からないままになってしまいます。これもまた、目標とは呼べません。

目標は高くなければ意味がない

掲げる目標は、「高い目標」「でかい目標」である必要があります。


部下に来期の目標を考えろと指示すると、「前期が4000万円で今期が5000万円でしたから、来期は6000万円くらいが目標になります」と、これまでの実績に応じた保守的な数字を挙げようとします。


しかし、目標数値とは「やれるであろう数値」を公表することではなく、「本気でやりたいと思う数値」を掲げることなのです。言い換えれば、目標とはその人の「意志」なのです。前期や今期の実績など関係がありません。あなたは来期いくらをやりたいのかという意志が目標になるのです。

でかい目標を掲げること、すなわちやりたい数字を目標とすることがなぜ大切かというと、どうすればその目標を達成できるかを自然と考えるようになるからです。どうしても達成したいという自分の意志ですから、昼夜問わず、食事をしているときも、歩いているときも、目標を達成するためにはどうすればいいかを考えます。


目標には期限が必要だとお話ししたのも同じ理由からです。「いつまでにこの目標を達成する」という期限が決まっているからこそ、「そのためにいまは何をしよう」「明日は何をしなければ」と考えるのであって、期限がないと「今日でなくても明日考えればいいや」「いまじゃなくてもいずれやればいいや」となってしまうのです。

自分が決めたやりたいことのためには、どんな努力をすることも苦になりません。寝る間を惜しんで仕事をすることもありますし、お客様に頭を下げることもあります。もちろん楽なことばかりではありませんが、本当に達成したい目標のためには何でもできるのです。

目標は全メンバーで共有することが必要

伸びてる会社の社長は、高い目標を立てるだけでなく、この目標数字を全社員と共有しています。


自分が立てた目標を内に秘めて頑張るタイプの社長もいますが、伸びてる会社はみんな有言実行です。理由は2つあります。


1つは、社長1人の力では会社の目標を達成できないからです。社員の力を借りるためには、社員一人ひとりが目標数字を認識し、社員一人ひとりがその数字を達成したいと感じてもらった上で仕事に取り組んでもらう必要があります。

そして、会社全体の目標を各部署や各人に細分化したり、各月や各週に細分化したりして、社員一人ひとりがその目標数字のどの部分を担っているのかを見えるようにし、役割を自覚できるようにする必要があります。全社の目標として大きな数字をいわれても、一人ひとりの社員はどう頑張ればいいのか分からないからです。


そして、目標数字を全社員と共有するもう1つの意義は、目標を声に出すと社長自身が本気になれるということにあります。

内に秘めた目標は誰にも伝わっていませんから、達成できなくても自分の中で「社員の頑張りが足りなかった」「商品開発に想定外の時間がかかった」「見込みが甘かった」など言い訳ができます。。

しかし、全社員に伝えてしまった目標が達成できないと、社員の士気にも悪い影響を与えますし、何よりも自分で言った以上は達成できないと格好悪いですから、どうやれば目標数字を達成できるかを自然に考えます。いつもそのことを考えるようになるので、本や新聞で読んだこと、人との会話の中などにちりばめられている目標達成や問題解決のヒントを、逃さずキャッチできるようになるのです。


もちろん、日々社長が目標数字を公言し、社員の耳と頭にすり込んでいくうちに、社員もその気になっていきます。頭で考えるのではなく、「声に出して言う」ことにはそれくらい大きな力があるのです。

低い目標ではチームがまとまった例はない

違う目標をもっている人と、同じチームで働くことはできません。ですから、社長は目標を公言することにより、社員の目標を統一することも必要です。


たとえば、あなたが日本代表のサッカー選手だとして、本気でワールドカップで優勝したいと考え、血のにじむようなトレーニングを重ねているとします。ところがチームメートに「自分は日本代表に選ばれただけで満足だ」と考えている人がいたら、どう考えますか。おそらく「こんなやつはチームから外してくれ」と思うのではないでしょうか。

会社でも同じことです。社員の中に目標が低い人が交じっていると、目標が高い社員のやる気を削いでしまいます。

全社員に高い目標を与えて、共有させる役目を果たすことができるのはただ一人、社長だけなのです。


ところで、チーム内に高い目標を持っているメンバーと低い目標しか持たないメンバーが交じっているとチームはうまく機能しませんが、「低い目標」でチームが団結することはあるのでしょうか。高い目標のために努力するのがしんどいと感じる社員を集め、社長が「うちのチームは無理せず、ほどほどの売上を上げていこう」と言えば、社員は喜んで働くでしょうか。

おそらく、結論はノーです。必ず「成長しない会社はつまらない」「成長しない会社にいるのは不安だ」という声が出てくるからです。


うちの事務所のO弁護士は、高校時代にサッカー部のキャプテンを務め、県大会優勝を目指して毎日厳しい練習を重ね、チームのメンバーと充実した日々を送りました。社会人になり、サッカー同好会のキャプテンも務めたそうですが、その際は「高い目標」を共有することができず、チームを本当の意味でまとめることができなかったといいます。これも、低い目標ではチームをまとめることができない一例だと思います。

トップダウン?ボトムアップ?~上手な目標の決め方

会社の目標数字は誰がどのようにして決めるのがいいのでしょうか。

目標とは「意志」なのだから、一番高い志をもっている社長が決めて部下に伝えるべきだという人がいます。部下にとっては、目標は低いほうが楽ですから、部下に目標を決めさせては高い目標などつくれるはずがないというわけです。

一方で、上から言われた数字では社員が本気になれるわけがないから、目標数字は社員が自分たちで決めて積み上げるべきだという人がいます。社員が自発的に動くためには、自分たちが自発的に設定した目標である必要があるというわけです。


実は、どちらか一方が正解ではなく「ボトムアップでトップダウンの数字をつくる」のが理想です。

つまり、社員は社長が一方的に決めた目標数字では納得せず、本気にならないので、まずは社員たちに目標数字を考えさせます。しかし、それが社長の考える数字より低い場合には、「本気を出せばもっとできるのではないか」「本当はもっとやりたいと考えているのではないか」「もう一度考えてきてくれないか」と言いながら、何度も社員と徹底的に話し合うのです。

そこまでした結果、社員が「やる」と約束する数字が、社長のやりたい数字と一致したときに来期の目標ができ上がるというわけです。


ボトムアップでトップダウンの目標数字をつくるためには、何度も社員と話し合うことが必要ですから、今期が終わりそうになって慌てて来期の目標数字を考えても、間に合いません。できれば期が締まる3カ月以上前から、来期の目標数字を社員と話し合うのがいいでしょう。

目標は高ければ高いほどいい、わけではない。

さて、でかい目標の大切さは伝わったと思いますが、目標は高ければ高いほどいいわけではない、ということを最後にお話しさせてください。


目標があまりにも保守的でやれる数字を掲げただけでは、あまり成長しないのは確かなのですが、実現が不可能なほど高すぎると、今度は「絵空事」になってしまい、逆効果なのです。

いくらそれが「やりたい数字」だったとしても、まわりの社員は「そんなの無理に決まってるじゃないか」と冷めてしまいますし、社長がいくら「どうやったら実現できるか」と考えたところで、無理なものは無理なのです。


私は今夏「富士登山競走」にチャレンジしてきました。富士山の麓から頂上まで距離21km、標高差3000mを制限時間4時間30分以内で駆け上るというレースです。

それなりのトレーニングを積んだつもりでしたが、結果は五合目関門でタイムオーバー、悔しい途中打ち切りという結果になってしまいました。

実はこのレース、完走するためにはフルマラソンで3時間を切るレベルが要求されるかなりレベルの高い大会で、私の実力では「高すぎる目標設定」だったのです。

それでもなんとか八合目の関門はクリアできないかなどと考えエントリーしたのですが、普段の練習でも「どうせ頂上までは行けない」という考えが頭をよぎると自分を追い込んだトレーニングができませんし、レース中もきついところでの一踏ん張りが利かないことを痛感しました。

ですから、目標数値は「チーム全員が誰にも負けない努力をして、しかも経営環境などの運にも恵まれてやっと達成できる数字」を理論上の上限とし、「そこそこの努力をして、普通に達成できる数字」を下限とした範囲の中で設定する必要があります。

もちろん、目標数値がこの上限に近いほど、チャレンジングなものになることは言うまでもありません。

貴社の目標設定 5つのチェックポイント

 ☑ 「期限」と「検証可能性」のある目標を設定している

 ☑ やれる数字でなく高い目標(やりたい数字)を掲げている

 ☑ 目標をメンバー全員で共有している

 ☑ トップとメンバー双方の意志を込めて目標を作っている

 ☑ 実現不可能でない範囲でチャレンジングな目標となっている